2021.02.09

「便秘」の解説

便秘は、大便が排出できない・排便までの時間が長いなどの病証を指します。西洋医学では、便秘は「病気」として捉えられていないため、便秘で通院することはほとんどありませんが、東洋医学ではこれを重要な病証として捉え、治療方針を立てて施術を行います。

 

<原因>

便秘の原因は、主に大腸の伝導機能の失調ではありますが、消化器(脾胃)や腎機能とも密接に関係しています。病理的には、津液不足(潤いの不足)、気滞(便を押し流す力の失調)、過労や久病による気血不足などがあります。

 

<便秘のタイプの分類>

1.胃腸に熱が溜まったことによる便秘(熱秘)

◆症状
大便が乾燥している、小便が黄色くて量が少ない(小便短赤)、顔が赤い、身体が熱っぽく感じる、お腹の張りや腹痛がある

◆解説
胃腸は、食べ物を消化する器官であるため、熱を生じやすくなっています(物を変化させるには熱エネルギーを必要とするため)。そのため、アルコールや辛い物、熱い物を食べ過ぎると、胃腸に熱が溜まり、水分が蒸されて大腸に潤いがなくなることで便秘になります。
また、熱は臭いを発するため、口臭なども気になるようになります。
このタイプの便秘は、水分摂取が効果的ですが、加えてホウレン草を食べるようにすると良いでしょう。

◆適応する漢方薬
麻子仁丸

◆常用されるツボ
合谷・曲池・足三里・上巨虚・中脘・尺沢

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2.気の流れが滞ったことによる便秘(気秘)

◆症状
便意はあるが排出できない、ゲップやガスがよく出る、お腹が張って痛い、食欲不振

◆解説
ストレスが強かったり考え過ぎたりすると、気の流れが滞りやすくなります。それが、大便を押し出す力(蠕動運動)を失調させ、便秘になります。ストレスが原因ですから、仕事がある日は便秘で、休日に大量に排便するといった現象も起こります。
このタイプは、適度な運動を行ったり、趣味の時間を作るなど、意識的にストレスを発散させる時間を作ることで排便がしやすくなります。

◆適応する漢方薬
六磨湯

◆常用されるツボ
合谷・太衝・足三里・上巨虚・中脘・天枢

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3.気の力が弱まったことによる便秘(虚秘)

◆症状
便意はあるが力んでも排出できない、排便後に疲労感を感じる、排便中に力むと汗が出る、

◆解説
気の力が弱まることを「気虚」と呼びます。この「気虚」は、過労や久病(長期間にわたる病気)により引き起こされます。また、虚弱体質のご高齢者も、「気虚」であることが多いです。このタイプの便秘は、単に便を押し流すだけでは、かえって「気虚」がひどくなってしまいます。そのため、「気」を補う施術を中心に組み立てます。
また、無理な運動はせず(気を消耗してしまうため)、脂っこい食べ物を控えるなど、日常生活からも改善が必要になります。

◆適応する漢方薬
黄耆湯・補中益気湯

◆常用されるツボ
合谷・足三里・太白・中脘・肺兪・脾兪

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4.血が足りなくなったことによる便秘(虚秘)

◆症状
便がコロコロしている、顔色が白い、めまい、動悸、

◆解説
血が足りなくなることを「血虚」と呼びます。血が足りなくなることで大腸の潤いがなくなり、便秘が生じます。病後や産後の便秘は、このタイプが多いです。
赤身肉やマグロといった鉄分を多く含む食べ物を摂るように心掛け、水分を多めにとるようにしましょう。また、無理な運動はせずに英気を養うことが大切です。

◆適応する漢方薬
潤腸丸・五仁丸

◆常用されるツボ
合谷・足三里・三陰交・膈兪

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5.温める力が弱まったことによる便秘(冷秘)

◆症状
小便が無色透明で量が多い(小便清長)、顔色が白い、手足が冷える、

◆解説
この場合の冷えを「陽虚」と呼びます。温める力を持つ「陽」が足りなくなり、身体に冷えの症状が出る状態です。陽虚になると大腸の伝導作用(蠕動運動)が低下し、排便が困難になります。
このタイプの便秘は、慢性的な冷え性の方やご高齢者に多く、水分の摂取では症状は全く改善しません。冷たい飲食物や生ものの摂取を控え、身体を温める羊肉やニラ、エビなどを多く食べると良いです。
また、白砂糖は身体を冷やしますので、黒砂糖に変えてみるのも良いでしょう。

◆適応する漢方薬
済川煎

◆常用されるツボ
合谷・足三里・命門・関元