2021.01.26

「めまい」の解説

めまいは、漢字で「眩暈」と書きます。「眩」は目の前が暗くなること、「暈」は頭暈(頭がくらくらする)ことを指し、両者が同時に現れることが多いので「眩暈」と呼ばれています。軽いめまいであれば目を閉じていれば治まりますが、重くなると回転が止まらずに立っていられなくなったり、吐き気を感じたりすることがあります。
中高年の方のめまいは、脳卒中に発展する危険性がありますので、お悩みの方は早期に何らかの東洋医学的施術をお受けになることをお勧めいたします。

 

<原因>

めまいの原因は、大きく「気が頭に昇りすぎるタイプ」と「気血や精といった栄養物質が昇れず頭を養えなくなるタイプ」の2つに分けられます。「虚実」で言えば「虚」に属するものが多いです。「虚」とは、すなわち何らかの栄養物質の不足(専門用語では「正気不足」)を指します。「上に昇りすぎるタイプ」では、その原因を考慮しつつ、気を下に降ろして改善させます。「栄養物質の不足タイプ」では、栄養物質を補うか、頭が栄養不足になっている原因を取り除き、清らかな気を頭に昇らせ、めまいを治します。

 

<めまいのタイプの分類>

1.体内の陰が不足して起こるめまい(肝陽上亢)

◆症状
めまい、耳鳴り、頭が脹るような頭痛(脹痛)、悩んだり怒ったりするとめまいや頭痛が悪化する、顔が赤い、イライラしやすい、不眠、夢が多い、口が苦く感じる

◆解説
長期的にストレスにされられていると、肝の陰血が傷つけられ消耗してしまいます。そうすると、肝の陰陽のバランスが崩れ、肝の陽気が上に必要以上に上昇してしまうことで、めまいが起こります。
肝は「将軍の官」という呼び名があるくらい、その陽気が旺盛になりやすい臓器とされています。それを丁度良いくらいに抑えているのが、肝の陰血なのですが、その陰血が不足してしまうと陽気を抑えられなくなってしまうのです。
この場合のめまいは、症状が激しく、耳鳴りや頭痛が伴なったり、軽くなったり重くなったりを繰り返して断続的に症状が続くという特徴があります。

◆適応する漢方薬
天麻鈎藤飲

◆常用されるツボ
合谷・太衝・三陰交・太谿

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2.気と血の不足によるめまい(気血両虚)

◆症状
動くとめまいが悪化する、過労によりめまいが起こる、顔色が白い、動悸がする、不眠、疲れやすく元気がない、飲食の量が減る

◆解説
体内の気血が不足することで、頭に気が昇らず、血液で脳を滋養できないため、生じるめまいです。原因は、主に①消化器(脾胃)が弱く、飲食物を気血に化生できない、②大量出血による気血の不足、③長期にわたる闘病生活により気血が消耗する、の3つが挙げられます。

◆適応する漢方薬
帰脾湯

◆常用されるツボ
合谷・内関・足三里・三陰交

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3.「先天の精」の不足によるめまい(腎精不足)

◆症状
めまい、心身ともに元気がない、眠りが浅く夢が多い、物忘れ、腰と膝が痛む、耳鳴り、遺精、

◆解説
東洋医学では、腎には「精」と呼ばれる栄養物質が保存されているとされ、「腎精」とも呼ばれます。この「精」は、両親からもらい受けるエネルギーであるため「先天の精」という呼称もあり、人間の生長壮老に深く関わります。
この「腎精」は、脳髄を補っているとされ、不足すると脳が栄養不足(髄海不足)となって、めまいが生じます。

◆適応する漢方薬
冷えの症状が伴なう場合:右帰丸
熱症状が伴なう場合:左帰丸

◆常用されるツボ
太谿・三陰交・腎兪・志室

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4.体内の水の流れの悪化によるめまい(痰濁中阻)

◆症状
めまい、頭が濡れた布で覆われたように重い、悪心、食欲不振、いつも眠たい(嗜眠)、

◆解説
体内の水分の流れが悪化し、それがドロドロの「痰濁(たんだく)」と呼ばれる病理産物となって気の上昇を阻害し、めまいが生じます。体内に「痰濁」ができる原因は、主に①アルコールや脂っこい物、甘い物の摂りすぎ、②過労、が挙げられます。

◆適応する漢方薬
半夏白朮天麻湯

◆常用されるツボ
太白・足三里・太谿・三陰交・脾兪